SNS広告は「作り込む」より「馴染ませる」。計算された素人感という考え方
インスタグラム広告では、「しっかり作り込んだクリエイティブよりも、あえて素人っぽく作るほうが効果が出る」という話を聞く機会がありました。最初は、綺麗で洗練された広告に見飽きたユーザーに対する、新しいアプローチやイメージチェンジの施策なのだろうと考えていましたが、実際は少し違うのかもしれません。いくつかの事例を見ているうちに、効果がある本当の理由は「素人っぽさ」そのものではなく、広告自体が掲載されているSNSのタイムラインに自然と馴染んでいることにあるのではないか、と考えるようになったのでその内容をメモ。 「素人感」が良いのではなく、「通常投稿に見える」ことが大切 ここで言う「素人感」は、ただ単に雑に作るという意味ではありません。大切なのは、ユーザーが普段見ている投稿「通常投稿」と違和感のない状態にするということ。 広告というと、どうしても専門家が用意した特別でクオリティの高いクリエイティブという印象があります。綺麗に加工された写真、美しいフォント、洗練されたレイアウトや装飾。ブランドとして見せるための完成度を追求した表現です。 テレビCMや雑誌のように、専門家が制作・監修したコンテンツが並ぶ媒体では、それらはブランドイメージを担保するうえでも非常に効果的ですし、周囲とのバランスを考えても違和感はないのですが、投稿の大半が友人や、興味のある飲食店、店舗などの日常投稿(デザイン業界ではない方の投稿)で埋め尽くされているSNS媒体に於いては、少々、馴染みが弱いのかもしれません。 例えば、綺麗で統一感のある情報サイトの中に、一点だけ画質の粗い写真が混ざっている時に感じる、あの違和感。 親しみのある投稿の中に、いきなり企業広告のような完成度の高いクリエイティブが入ると、見ている方は瞬時に「違和感」と身構えてしまうのかもしれません。 そんな中で、一般の投稿と同じ温度感で作られた広告は、自然な状態で受け入れてもらいやすいように感じます。 作り込みすぎないデザイン戦略 前述の流れから考えると、インスタグラムでは、やはり作り込みすぎないデザインの方が有効なのかもしれません。例えば下記のような内容です。 施策内容 SNSで見慣れたフォント(パソコンやスマートフォンに備え付けのフォント)を使う。 過度な装飾やエフェクトを避ける。 日常の投稿のような写真や動画を使う。 テロップやレイアウトもSNSらしいテンポにする。 一見すると「短時間で簡単に作っている」ようにも思えるデザインではありますが、実際はユーザーのタイムラインに馴染ませるために、投稿内容の傾向や特徴を盛り込みながら設計されたデザインで、「素人っぽい」と見せているだけの「素人風デザイン」になります。 インスタグラムだけではない、媒体ごとに異なる「素人風デザイン」 「素人風デザイン」という考え方は、実は、インスタグラムだけに当てはまるものではありません。 TikTokにはTikTokらしい動画のテンポがあり、XにはXらしい投稿の見せ方が、そしてYouTubeにも、それぞれ自然に見える表現があります。そして、どのSNSでも共通して大切なことは、そのプラットフォームで普段流れてくる投稿と大きく乖離しない状態にすることです。 SNSではありませんが、この考え方はメディアCMにも当てはまります。某漫画アプリのCMでは、放送中のアニメ番組とコラボしたような内容が存在し、本編の流れから、違和感なくCMの内容を見れてしまいます。 これは「素人感」とは少し異なる事例ですが、「広告だけを浮かせず、いつものコンテンツの一つとして溶け込ませる」という点では、全く同じ思想に基づいています。 SNS広告は「目立つ」より「馴染む」が強い 広告というと、どうしても「目を惹く、目立つデザインを作ること」が正解だと思われがちです。もちろんそれも重要ですが、それはあくまで媒体の文脈に馴染んでいるからこそ機能するものです。 人間関係でも同じではないでしょうか。好意的に受け入れられた状態でのアピールは、更なる好印象に繋がりますが、そもそも受け入れられていない状態では何をしても逆効果に感じます。 広告が洗練されたメディアの中だけで完結していた時代は、「高品質で目立つこと」が正解でした。しかしそれは、「洗練されたメディアという場所に馴染んでいたから」成立していたからかもしれません。 広告の目的は、デザインの完成度を競うことではなく、ユーザーに行動を起こしてもらうことです。そういった意味では、そのSNSの文脈や空気感にどれだけ馴染めるかということが、今後のクリエイティブづくりにおける一つの指標に繋がっていくのかもしれません。






























